賃貸オーナーが知っておきたい損害保険の種類と特徴

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賃貸経営では「管理」が重要だと言われます。
いわゆる賃貸管理と建物設備のメンテナンスだけでなく、
今や「リスク管理」も重要な要素になってきました。
そこで今回は、予測できない自然災害や事故に備える損害保険に焦点を当て、
昨今の保険料値上げの状況、保険の種類、節約のポイントなどについて解説していきます。




災害の多発で火災保険料の値上げが続く



昨年10月、火災保険料の改定が実施されました。
この10年で5回目ですが、今回は全国平均で13%という過去最大クラスの値上がりです(図1参照)。



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火災保険(住宅総合保険)の保険金は、
損害保険料率算定機構が公表している「参考純率」(純保険料率)をベースに、
損保会社が自社の経費となる「付加保険料率」を加えた割合で計算されます。

図1に、ベースとなる「参考純率」が改訂されてきた変遷を示しました。
損害保険料率算定機構が改訂を発表した翌年に、損保各社が自社の商品に反映されるのが一般的です。

値上げラッシュのきっかけは、2011年の東日本大震災の被害補償の激増でした。
その後も、熊本や北海道で震度7を記録する大地震に加えて、
毎年のように台風や集中豪雨による激しい風水害が起きたことが、連続値上げの理由です。
昨年10月の過去最大の値上げの理由は、こうした自然災害の多発だけでなく、
建築費や修繕費のインフレによる影響も少なくありません。

参考純率は、地域や建物構造によって異なります。
今回の改訂では、従来まで全国一律だった水災の保険料率について、
リスクに応じた細分化も実施されました。
1~5など地まで5段階で評価されており、など級が下がるほど保険料率が高まります。
この水災のリスク細分化を加味した保険料率が図2です。
平均では10.3%のアップと書きましたが、
地域や建物構造によっては30%を超える値上がりもあります。



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保険料を節約する3つのポイント



保険料率のアップは保険料自体の値上がりに跳ね返ります。
度重なる保険料の上昇は賃貸オーナーにとって痛手ですが、
高いからといって加入しないわけにはいきません。
建築時のローンを借りるには、火災保険への加入が義務付けられているからです。
リスク対策という観点でいえば、賃貸経営に必要な経費と割り切り、
いかに負担を軽減するかを考えるのが賢明でしょう。

保険料節約のポイントは以下の3つです。
①複数社から相見積もりをとって比較検討する
②契約プラン・補償範囲をカスタマイズする
③保険料率の低い地域や構造を選ぶ

1番目は、どんな商品サービスにも言えることですが、
特に賃貸住宅の火災保険は金額が大きくなります。
融資元の金融機関や賃貸管理会社が提携している保険代理店にまかせてしまうのは禁物です。
複数の保険会社から相見積もりを取って比較することは必須と言えるでしょう。

次に、保険に関わる基本的な仕組みを理解して、
賃貸オーナーが自らの経営判断として適切な商品を選ぶことが大切です。
一般に住宅用火災保険の補償対象は、図3のように分かれています。
火災の被害だけでなく、様々な災害や事故を補償してくれますが、
補償の範囲が広くなるほど保険料は高くなることを知っておきましょう。


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住宅総合保険には、図3のAからDまですべてをパッケージにしたセット商品もあれば、
どの損害を補償対象に含めるかを柔軟にセレクトできるタイプもあります。
オーナーにとって必要な内容を組み合わせることで保険料を節約できるわけです。
例えば、高台に立地していて洪水や浸水の心配がなければ、水災の補償を外しても良いでしょう。

最後に、これから賃貸住宅を建てる場合や投資をする場合には、
保険料を抑えられる構造やエリアを選べます。
図2で示したように建物の構造は3種類です。
建物のイメージとしては、M構造は鉄筋コンクリート(RC)造のマンション、
T構造は鉄骨造や2×4工法などの準耐火構造のアパート、
H構造が在来工法の木造アパートと考えていいでしょう。
火災への強さで言えば「M構造>T構造>H構造」の順番になり、
耐火性能が高いほど保険料は安くなります。
これに地域ごとの災害リスクを加味して検討していきましょう。



地震保険から施設賠償責任保険まで、必要に応じて補償の充実を



建物に係る損害保険としては、火災保険の他に地震保険もあります。
地震保険は任意加入ですが、地震による火災や延焼の被害は火災保険では補償されないので、
賃貸オーナーとしては加入しておく方が賢明でしょう。
地震保険への加入率は、現在は全国平均で7割を超えています。

地震保険は、主保険の火災保険とセットで契約する形になり、単独で加入できません。
保険金額は、火災保険の契約金額の3050%の範囲内で設定するのが基本です。
地震保険で支払われる保険金は、図4の通り。
建物の損害状況に応じて細かく設定されています。



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全損の保険金は、地震保険の契約金額の100%となっていますが、
もともとの契約金額が火災保険の50%以内のため、新たに建て替える費用には足りません。
ただ、最近は火災保険に「地震火災費用保険金」の特約も登場しています。
これは火災保険金額の5%相当額が300万円を限度に支払われるものです。
この枠を最大50%に拡大することも可能なため、
この特約を組み合わせれば100%補償もできるようになります。

この他にも、図5のように火災保険に付保できる様々な特約があります。


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同様の内容で単独の少額短期保険(ミニ保険)として提供している保険会社もあります。
必要な内容を整理したうえで、幅広く検討してみましょう。