今年も住宅省エネキャンペーンが始まります。
国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携ワンストップ申請になってから3年目にして、
過去最大の予算が計上されました。
今年の特徴は、去年まで対象外だった賃貸住宅の新築も対象になったこと。
2025年1月末時点の最新情報をお届けします。
予算拡大で補助枠も新設。新築の対象に賃貸住宅が追加!
政府は「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けて、いよいよドライブをかけ始めたようです。
2023年度に始まった3省合同の「住宅省エネキャンペーン」は、
年を追うごとに予算規模が拡大しています(図1参照)。
2024年度は前年比1.5倍に膨らみました。
2025年度は予算面では微増ですが、対象範囲が広がり、
新しいカテゴリーが登場したことに注目してください。
このキャンペーンは名称の通り、省エネ化に向けた住宅の新築や購入、中古リフォームが対象です。
昨年までは新築する場合に使える補助金の対象が、
持ち家の建築や分譲住宅の購入に限られていました。
そのうえ、利用できるのは18歳未満の子をもつ子育て世帯と、
夫婦のいずれかが39歳以下の若者夫婦世帯のみ(以下「子育て世帯等」)です。
省エネと少子化対策をセットにしていたともいえます。
今年のキャンペーンでは、新築住宅の補助対象に賃貸住宅が加わりました。
しかも、支援事業の名称に「子育てグリーン住宅支援」と出ていますが、
子育て世帯以外のすべての世帯で使える「GX志向型住宅」という枠が新設されているのです。
詳しくは後で解説します。
賃貸住宅向け給湯省エネ・リフォームの予算が縮小した背景
リフォームについては前年並みが中心ですが、
1つだけ前年の4分の1近くまで縮小されてしまったのが「賃貸集合給湯省エネ」の補助金です。
賃貸住宅にとっては逆風と思うかもしれません。
実は、2024年の利用率が極端に低迷していたことを受けて、予算枠を適正化したと見られます。
図2は各補助金の予算達成率を示したグラフです。
全体的に見ると100%近い達成率が多く、低くても70%台なのに対して、
「賃貸集合給湯省エネ」だけがわずか7%でした。
この理由は、賃貸経営との兼ね合いが大きいのではないでしょうか。
元々、2023年のキャンペーン開始時から「給湯省エネ」の対象に賃貸住宅も入っていました。
しかし、導入する設備が大型で高額なヒートポンプ式給湯機(エコキュート)や
家庭用燃料電池(エネファーム)などしか対象にならなかったため、
共用スペースの限られる賃貸住宅には導入できなかったわけです。
そこで2024年に、小型の潜熱回収型給湯機(エコジョーズやエコフィール)への
交換についても対象にして、賃貸集合住宅専用の枠を設けました。
それでも、採算性の問題、原状回復や設備更新のタイミングに合わなければ使えないなどの理由から、
利用が増えなかったと推察されます。
そういう意味で、2025年の賃貸集合省エネの予算枠はまだまだ余裕のある水準といえるでしょう。
子育てグリーン住宅支援【新築】は、1戸当たり160万円の大型補助
では、住宅の新築・購入に使える補助金の具体的な内容を解説します。
今回の目玉は新設された「GX志向型住宅」です。
1戸当たり160万円となっており、賃貸住宅の場合は戸数分になりますから、
これまでにない大型の補助額と話題になっています。
GXは「グリーン・トランスフォーメーション」の略で、
元々は経済産業省が音頭を取って数年前から使い始めた用語のようです。
意味としては、環境保護と経済成長の両立を図りながら
"脱炭素社会"への変革を推進する取り組みを指します。
住宅分野にもGXを推進するために誕生したのが「GX志向型住宅」です。
「ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能をもつ新築住宅」と定義されていて、
具体的な条件は次の通り。
①住宅性能表示制度の「断熱等級」が6以上(現行の省エネ基準比で▲30%)
断熱等級5以上(〃▲20%)のZEHよりもランクが上です。
②一次エネルギー消費量(BEI)の削減率:再生可能エネルギーを除いて35%以上、
再生可能エネルギーを含めて100%以上
この条件を達成するには、太陽光発電などの創エネ設備が必要となります*。
ちなみに、ZEHは再生可能エネルギーを除いて20%以上で、創エネは必須ではありません。
*ただし、寒冷地や都市部狭小地など、太陽光発電の創エネが十分でない条件の場合については、
削減率75%以下などの別途条件を設ける。
子育て世帯等が長期優良住宅やZEH水準住宅を新築・購入する場合も支援の対象となりますが、
2024年度より補助額が縮小されました。
また、今年から新たに対象となった賃貸住宅で使う場合には、次のような制約があります。
【賃貸住宅を対象とした追加ルール(長期優良住宅又はZEH水準住宅に限る)】
・ 申請ができる戸数の上限は、該当する戸数の50%。
・ 新築時最初の入居募集(3カ月間)は、対象を子育て世帯等に限定する。
・「子育て世帯等」向けに、補助金額を勘案した合理的な優遇家賃を設定する。
なお、GX志向型住宅も含めて、子育てグリーン住宅支援の対象は、
床面積が50㎡以上240㎡以下となっているため、
床面積の狭いシングルやカップル向けの賃貸住宅には使えません。
グレードアップのための建築コスト上昇に加えて、この点はややネックになるでしょう。
DR(ディマンド・レスポンス)と併用して、さらに補助額アップも
省庁連携のキャンペーンということで、子育てグリーン住宅支援の【新築】枠では、
蓄電池の設置を対象にした「DRに対応したリソース導入支援事業(仮)」の補助金も併用できます。
補助額は、蓄電システムの導入に必要な費用の3分の1以内です。
蓄電システムは、工事費込みで数百万円かかると言われていますから、
その3分の1でもかなりの金額になるでしょう。
GX志向型住宅の補助金を一緒に使えば合計で200万円を軽く超えてきます。
ちなみに、「DR」というのは「ディマンド・レスポンス(需要応答)」の略で、
電力の需給バランスを調整する仕組みです。
このDRに対応するには、一定のハードルがあります。
蓄電池アグリゲーターと呼ばれる事業者と契約して、
住宅内での電力の使用状況を監視しながら節電を促すDRプログラムに参加しなければなりません。
また、DRプログラムを走らせるためにHEMS(住宅エネルギー管理システム)の導入も不可欠です。
ただ、HEMSの導入費用は今回の補助の対象外。
10~20万円の追加費用が発生しますが、
地方自治体によってはHEMSの補助制度があるので検討してみましょう。
設備リフォーム向けの補助も継続。活用範囲も広い
今回の3省連携キャンペーンでは、リフォーム向けの補助金も引き続き実施されます。
「先進的窓リノベ」や「給湯省エネ」は、内容も補助額も2024年度とほぼ同様です。
内容が改訂され、補助額も少し拡大された「子育てグリーン住宅支援【リフォーム】」
について触れておきましょう。
補助額は、リフォームの内容によって上限60万円のSタイプ(必須工事3種のすべて実施)と、
40万円のAタイプ(必須工事3種のうち2種を実施)に分かれています。
必須工事は、①開口部の断熱改修、②躯体の断熱改修、③エコ住宅設備の設置。
附帯工事は、子育て対応改修、防災性向上改修、バリアフリー改修などです。
子育て対応改修の中に宅配ボックス設置も含まれている(2024年度規定)ため、
人気の高い設備導入にも活用できるのではないでしょうか。
申請手続きの開始時期は、現段階(2025年1月末時点)では決まっていません。
昨年度と同様なら3月末からスタートすると予想されます。
補助の対象は2024年11月22日以降に、新築は基礎工事より後の工程の工事、
リフォームはリフォーム工事に着手したものです。
この条件に合う場合は、手続きの詳細が発表されるニュースに気をつけておきましょう。
補助金の申請額が予算の上限に達すると受付は終了するため、
早めの申請を推奨する指摘も少なくありません。
ただ、前述したように2024年の予算達成率は、いずれも100%に達しませんでした。
あわてずに、じっくり検討してみてください。