新登場!地図上で情報を比較検討できる「不動産情報ライブラリ」とは

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不動産の売買を検討している人にとっては、最新の価格相場はもちろん、
周辺エリアの利便性や安全性も気になる情報でしょう。
これまで不動産に関わる情報は、あちこちのサイトに分散して調べるのが大変でした。
1つのWebマップにまとめて表示できたら...。
そんな悩み解消につながる「不動産情報ライブラリ」の運用が4月1日からスタートしました。


バラバラな情報をWebマップに統合、役立つ情報の宝庫


インターネットには情報が溢れています。
不動産価格に関わる情報、学校や公共施設・医療機関の情報、災害に関係する情報など、
検索して各情報元のサイトに飛んで調べればたいていのことはわかるようになりました。
ただ、知りたい情報をすべて得るには、時間と忍耐が必要です。
各分野に精通していないと、情報にたどりつけない人もいるかもしれません。

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不動産価格ひとつとっても、
地価については国土交通省が提供していた「土地情報総合システム」のサイト、
マンションや一戸建ての価格については国土交通大臣が指定した
不動産流通機構の「レインズ」のサイトなどを別々に閲覧しなければなりませんでした。

また、不動産を選ぶときには、物件価格だけでなく、保育園や学校、医療機関の場所など
仕事や生活に関係する周辺施設もチェックするでしょう。
民間企業が運営するWebマップにも出ていますが、必ずしも網羅されているとは限りません。
地方自治体の公式ホームページには、区域内の学校、医療施設が出ているものの、
文字情報が中心のケースが多いようです。

さらに、最近では地震や津波、台風などの
災害にともなう洪水被害などを確認する人も増えてきました。
各種の災害リスク情報は地方自治体や国土地理院などで出していますので、
個別にはチェックすることができます。
ただ、物件情報との関係を知るには、
自分で1つ1つ突き合わせてみないと位置関係を把握できません。

こうした不動産取引に関わる"ほしい情報"をまとめて、1つの地図上に重ね合わせて表示し、
比較検討できるようにしたのが、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」です(図1-2参照)

図1-2.png

 *国土交通省「不動産情報ライブラリ」のデータを基に編集部で作成(一部画像を合成、解説文字を追記)


マイホームから投資まで、様々なカテゴリーの情報を得られる


このライブラリを活用して得られる情報の例を示しましょう。
例えば、子育てファミリーなら、保育園・幼稚園の位置に加えて、
小学校や中学校の学区表示が出るのは便利です。
物件の近くに学校があったとしても、実は学区が違うということもあります。
このマップなら、学区との関係を意識しながら立地を検討できるでしょう。

医療機関は、大きな病院だけでなく町のクリニックも表示され、診療科目もわかります。
災害関連では、ハザードマップと併せて避難所の場所もわかるので、防災対策にも有効です。

不動産投資を検討しているなら、価格相場と併せて地域の将来性を把握するのに役立つでしょう。
まず地価情報については、国が公表する「公示地価」と都道府県地価調査(基準地価)があります。
例えば、公示地価については図2のように過去10年以上の推移が表示され、トレンドが一目瞭然です。
個別の調査地点の詳細な鑑定評価書も閲覧できるので、
その土地がもつポテンシャルや有効な活用法のヒントも得られるかもしれません。

 図2.公示地価は過去の推移もわかる
図2.png

 *出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」


さらに、人口動態、20年後までの将来推計人口、過去数年間の駅別乗降客数もわかります。
今後人口がどう動くのか、不動産の需要はどうなるかなど、地域の将来性を考えるうえで有効です。
地図上で上下左右にスクロールしながら、駅勢圏単位で比べながらチェックできるので、
エリアの違いを感覚的につかめる使い勝手も悪くありません。

また土地勘のない場所、リゾート地などで不動産の取得を検討している場合も役に立ちます。
同ライブラリでは全国津々浦々の情報をカバーし、
民間の不動産ポータルサイトでは物件がまったく出ていないような地域の
宅地、農地、林地などの地価や取引動向を調べることも可能です。

例えば軽井沢町の宅地は、2023年の1年間で3000件以上の取引があり、
取引価格がわかる約250件の詳細情報を見ると、
100円以下から坪1500万円まで実に多彩な取引が行われていることがわかります。
様々な地域を興味本位で覗いてみるのも楽しいでしょう。


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*出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」


掲載情報の時期や中身に注意しつつ、いろいろ活用してみよう


不動産情報ライブラリを活用する場合の注意点についても触れておきましょう。
まず価格情報については、データ自体は、基本的にはすべて
従来から国土交通省や関連団体が運営してきたサイトで掲載されていたものと変わりません。

公示地価や基準地価は、不動産鑑定士の調査に基づく公的な地価データで、
どちらも年に1度の調査のため、実勢価格とは乖離があります。
投資物件の担保評価を把握するうえでの参考値、
長期トレンドを把握するデータとして考えた方が良いでしょう。

また、不動産取引価格情報と成約価格情報は、どちらも実際に売買が成立した不動産の価格です。
SUUMOHOME'Sなどの民間運営のポータルサイトに出ている
売り出し価格(売主の希望価格)に比べれば、実勢を反映していると言えます。
ただし、このライブラリ上で提供されるのは、物件所在地が「町・大字」レベルまで。
何丁目何番地、マンション名などはわかりません。

データの集計も四半期ごとで、数か月前の成約価格となります。
個別物件の直近の動きではないことを意識しておくべきです。
現在のような価格の変動が激しい時期には、取引時点の価格とのタイムラグが生じるため、
実際に取り引きする際には、
やはり市場の最前線で鮮度の高い情報をつかんでいる不動産会社のアドバイスが必要でしょう。

とはいえ、同ライブラリの掲載情報は、下記のように多岐にわたります。
土地オーナーにとって役立つ路線価、賃料情報が入っていないのは残念ですが、
様々な情報を重ね合わせ、いろいろな角度から比較検討してみると、
これまで見落としていた不動産の価値を見つけられるかもしれません。
活用の仕方次第で役立つ情報を得られるのではないでしょうか。

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*従来、地価情報を提供していた「土地情報総合システム」は今回の「不動産情報ライブラリ」に統合されました。