住宅・賃貸オーナーに関わる2024年度税制改正

2024年度の税制改正では、目玉となるような大きな変更はありません。
住宅関連では、すでにある特例の要件に、
子育て支援と省エネ対策の強化を盛り込んだ項目が多いと言えるでしょう。
そのなかで賃貸オーナーに関わりのある項目について紹介します。


省エネ促進のリフォームに対する所得税・固定資産税の軽減特例が2年延長


現在、国の政策は子育て支援と省エネ対策に比重が置かれています。
なかでも、政府が国際公約として宣言した「2050年カーボンニュートラル」の達成に向けて、
省エネ・省CO2を強力に推し進める対策が目白押しです。
環境省・経済産業省・国土交通省の3省が連携した「住宅省エネ2024キャンペーン」では、
省エネ化を進めるための補助金が大幅に拡充されました。

こうした政策に合せて税制も動いています。
1つは、図1に示した「中古住宅のリフォームに関わる特例措置」の期間延長と対象工事の拡充です。

「税制改正」図1.png


対象工事にかかった費用の10%を所得税から控除するもので、最大60万円の減税となります。
今回の税制改正では、特例の適用期限が2023年末から2025年末までと2年間延長されました。
また、対象工事に「子育てリフォーム」が追加されています。

賃貸住宅でも、リフォーム後の家屋の1/2以上が自己居住用、
つまり1/2未満が賃貸の、賃貸併用住宅であれば特例を利用できます。
前述した補助制度をあわせて活用すればメリットは大きいといえるでしょう。

また、同様のリフォームをした場合に固定資産税が減額される特例も、
適用期間が2年間延長されました。
減額割合は、耐震が1/2、バリアフリーと省エネは1/3、長期優良住宅化が2/3です。
賃貸住宅も対象になります。
ただし、こちらは子育て支援への対象拡大はありません。


生前贈与に有効な「住宅取得等資金贈与の特例」の省エネ要件がZEH並みに


次は、相続対策に関わる改正です。
節税につながる「生前贈与」の手法の1つに「住宅取得等資金贈与の特例」があります。
これは、子や孫がマイホームを取得・リフォームするための資金を親や祖父母が贈与する場合に、
一定の非課税枠まで贈与税がかからない特例です。
今回の税制改正で、この適用要件が一部見直されました。

非課税枠は、質の高い住宅が1000万円、一般住宅が500万円と2つに分かれています。
質の高い住宅とは、耐震性・バリアフリー性・省エネ性が
一定以上の水準を満たしている住宅のことです。
この特例の適用期限が2026年末まで3年間延長されたうえで、
新築住宅の省エネ性についての規定が、次の通り強化されました。

【従来】断熱等性能等級以上または一次エネルギー消費量等級以上

【改正後】断熱等性能等級以上かつ一次エネルギー消費量等級以上


従来の規定は、2016年に改正された「省エネ基準」をクリアするレベル、
改正後は、ややハードルの高いZEH水準になります。
2025年に、新築住宅は省エネ基準を満たすことが義務化され、
2030年までに新築住宅の平均でZEH水準を目指す政策に対応したものです。
つまり、2016年省エネ基準は、もはや「質の高い住宅」ではなく一般的な住宅になり、
非課税枠が縮小されてしまったと言えます。
耐震性とバリアフリー性についての要件は変わりません。

ちなみに2023年度の税制改正では、相続・贈与税の抜本的なルール見直しがあり、
「暦年贈与」の相続財産への持ち戻し期間が3年間から7年間に延長されました。
生前贈与の王道だった暦年贈与の節税対策に締め付けが強化される一方で、
「相続時精算課税制度」については新たな基礎控除が新設されるなど、使い勝手が良くなっています。
そのため相続時精算課税制度の利用率が高まっているようです。

今回の税制改正では、親の年齢が60歳未満であっても
相続時精算課税制度を選択できる特例措置についても、3年間延長されます。


住宅ローン減税に子育て世帯の枠を新設、控除額を拡大


最後は住宅ローン減税について取り上げます。
これは、住宅ローンを借りてマイホームを購入した場合に、
年末ローン残高の0.7%相当額の所得税・住民税を
13年間(中古住宅は10年間)にわたって控除する特例です。
原則として自己居住用のみが対象で、賃貸住宅には適用されません。
賃貸オーナー自身が自宅を新築したり購入したりする場合に関わります。

控除対象になる借入限度額は、図2の通り、住宅の性能によって異なります。
ここでも、省エネ基準やZEH水準、長期優良住宅・低炭素住宅など、
環境への負荷が低い住まいが優遇されていることがわかるでしょう。
また、2024年と2025年に居住した場合は、2023年までに居住した場合より、
借入限度額が縮小されます。

今回の改正では、新たに「子育て世帯等」(「子育て世帯」と「若者夫婦世帯」)の枠ができ、
借入限度額を通常よりも高く設定しています。
2024年の最大控除額は、子育て世帯等が長期優良住宅を取得した場合に、13年間で455万円です。

「税制改正」図2.png


以上が今回の税制改正の主な内容です。
この他、不動産を取得した際にかかる登録免許税、不動産取得税、
固定資産税などの税額が軽減される時限措置は、いずれも期間が延長されています。
減税・増税のどちらにも傾いていません。

税制改正の内容は、今年度の通常国会通過後に正式に決まります。
個々の詳しい内容や適用条件については、改めて最新情報を確認してください。