毎年、住み替えシーズンになると「住みたい街ランキング」が発表されます。
2023年5月に行動制限が解かれ、
アフターコロナになってからの街選びはどうなったのでしょうか。
住まいのベースとなる街への志向に変化があったのか、それともなかったのか、
最新情報をご紹介します。
「葛西」が2位、「北千住」は8位、準都心エリアが復活
2020~2022年にかけて、
首都圏では東京23区から周辺部へ人口の転出超過が起きていました。
テレワークの拡大などにより、住まい探しの郊外化が進んだと指摘されたわけです。
しかし、2023年に入ると、再び東京23区へ転入超過が起こり、
"都心回帰"が復活したとも言われています。
街の人気度にも変化が起きたのでしょうか。
賃貸オーナーが借り手の立地ニーズを知るうえでは、
LIFULL HOME'Sの「住みたい街ランキング」が参考になります。
同サイトの検索数の多い駅を集計し、
「借りて住みたい街」と「買って住みたい街」に分けて調査されているからです。

2024年版「借りて住みたい街」のランキング1位は、小田急小田原線の「本厚木」駅です。
大型再開発が進行中で、4年連続でトップの座を守りました。
JR中央線「八王子」駅は前年に引き続き3位をキープしています。
一方で、2021年から2023年まで2位だったJR京浜急行線「大宮」駅が4位に下がり、
代わって東京メトロ東西線の「葛西」駅(前年は6位)が2位に浮上しました。
もう1つ注目されるのが、8位にランクインした東京メトロ千代田線「北千住」駅です。
前年の20位から大幅にアップしました。
「葛西」と「北千住」は、いずれも東京駅からほぼ10km圏で、
大手町まで地下鉄の所用時間が15分程度です。
住所で言えば、江戸川区と足立区なので都心とは言えませんが、
こうした準都心物件が上位に入ったという点では、
都心回帰に近い現象が起きたとも言えるでしょう(図2参照)。

インバウンド需要が復活?!郊外人気も根強い
アフターコロナでインバウンドも復活したと言われています。
「葛西」のある江戸川区は、IT企業で働く外国人の受け入れを積極的に行ってきました。
特に「西葛西」は"リトル・インディア"と言われるほどインド人が多く住んでいます。
「北千住」のある足立区は中国・韓国系の居住者が少なくありません。
両区ともベトナム人、フィリピン人が多いのも特徴です。
いずれも賃貸住宅のインバウンド需要が期待できるでしょう。
「買って住みたい街」では、10km圏内のJR山手線「五反田」駅、
都営大江戸線「勝どき」駅、東京メトロ東西線「南砂町」といった都心物件が
ランキングに入りました。
資産価値という点では、都心の強みに対する志向は強いでしょう。
一方で、50~60km圏のJR東海道本線「平塚」駅、
JR総武本線「八街」駅が上位に食い込んでいます。
図3のように、どちらのエリアも5年前は20位圏外にあり、
コロナ禍でどんどん順位を伸ばしてトップ5に入りました。
賃貸では常に上位の「大宮」は、購入では20位圏外から上位に食い込んでいます。
「買って住みたい街」では人気の「横浜」が、前年の2位から9位へランクを落とすなど、
中間立地がスッポリと抜けてしまい、
都心と郊外の二極化が進んでいると言えるかもしれません。
ちなみに「本厚木」「八王子」「大宮」の3駅は、
賃貸と購入の両方で上位に入っています。
30~50km圏の郊外エリアの人気が根強く残っていることは間違いありません。
"穴場"のトップは「北千住」。「大宮」「葛西」もランクイン
おなじみSUUMOの「住みたい街ランキング」についても触れておきましょう。
こちらは賃貸と購入を問わず、エリアのブランド・イメージから見たランキングになっています。

トップ10はすべてJR沿線です。
そのうち6エリアは東京23区内のJR山手線沿線になっています。
その他は神奈川県と埼玉県の中核都市で、千葉県内のエリアは入っていません。
"憧れ"を含む知名度の高い駅が中心と言えるでしょう。
こうしたなかで、2位に「大宮」駅、10位に「浦和」駅が入っている点が目を引きます。
「大宮」は過去最高ランクで、SUUMOの調査では不動の人気エリアだった
「吉祥寺」と「恵比寿」を抑えてトップの下に入りました。
「浦和」は2022年に5位まで上りつめましたが、一時ランク外にはじき出された後に、
今回トップ10に返り咲いた格好です。
SUUMOでは「穴場だと思う街」のランキングも発表しています。
交通や生活の利便性が高い割に、
家賃や価格がリーズナブルでコストパフォーマンスが高いエリアです。

こちらは埼玉県内の駅が多く、千葉県・茨城県も含む多様な駅が入っています。
おおむね都心ターミナル駅まで30~40分以内にアクセスできる中間立地と言えるでしょう。
トップの「北千住」や「大宮」(3位)、「葛西」(7位)など、
LIFULL HOME'Sの調査で触れた地点も複数ランクインしています。
20~30代の若い層が実際に部屋探しをする場合は、
こうした"穴場"を狙う人が多いかもしれません。
街のランキングは他にもあります。
複数の調査を見比べながら、
新たな不動産投資や資産の組み換え先を検討してみるのもいいでしょう。



